報道現場で起きた性暴力と取材のあり方について

the Letterをはじめて、なかなか更新できなかったのですが、残り少ない人生の中で、取材中の案件や何をテーマに書いていくかを考えました。
郡司真子 2021.10.11
誰でも

Victim/Survivor Focus 性暴力 人権 子どもの権利条約、報道現場の安全について、私の人生の宿題というべき課題を少しずつ丁寧に整理して書いていくことにします。

日本は被害者中心主義ではなく、Victim/Survivor Focusが足りません。少しでも被害者側に寄り添う優しい社会にするために私ができることを書いていきます。

現在係争中の長崎事件裁判の原告側レク(2021年9月28日)で弁護士が私の質問に答えた言葉が、今の私の一番のお守りです。その言葉を皆さんにお伝えします。

裁判に関する記事 どんな裁判なのか

私もフラワーデモで取材していただいた毎日新聞松村真友記者の記事。

提訴時の詳細は尊敬する竹下郁子記者の記事を読んでください。

原告側記者会見について弁護士ドットコムニュース

✳︎以下が、今の報道現場の皆さんに知っていただきたいことです。

2021年9月28日長崎事件裁判原告側弁護団レク文字起こし

性暴力二次加害についての責任を問う長崎事件裁判が日本の報道現場の取材のあり方へどのように影響するか(二次加害が争点の裁判が報道の現場の取材体制、現場の影響について)私が2人の弁護士に質問しました。

角田由紀子弁護士

この裁判がこれから報道取材に与える影響についてですが、女性記者が安全に仕事をするには、どういう領域が必要か、考えなきゃいけないということだと思います。

記者が危険な現場に身を置くということの、危険というのは、今まで戦争の現場ということしか考えられていなくて、本件のような取材現場が危険の範疇に入っていなかった。そのあたりのことを見直していく必要がある。女性の記者が安全に働くためにはどうするのかというのは、報道の側からでも考える必要があるのでないか。なんでもかんでも夜討ち朝駆けで男性と同様に働けば良いということにならないのではないかと思っております。そこは、取材の仕方とか報道のあり方を身の危険という視点から、戦争の現場でないところから、考え直す必要があるんではないかと思います。

中野麻美弁護士

難しい問題ですね。日本の民主主義とか政治のあり方の根幹に関わっていると思うんです。社会を誰が支配しているのかっていう、問題に関わっているわけで、そうそう簡単に答えが出るわけではない。こういう社会の中での取材であるということ、こういう現実の中に真実を手にするために記者が取材活動しているということなんです。

私の仕事もそうですからね、私なら夜討ち朝駆けやっちゃうじゃないかな。取材のあり方って、社会の構造に関わっているので、どういう問題なのかって、みんなで議論する必要がある。民主主義の動脈でしょ、報道ってのは。その報道のあり方に関わっているわけですよね。

人間関係を作って、夜いろんなお店で情報をとると。あるいは、その過程でお金のやりとりをしたりとかね、真実の情報を取るために必要であるかのように、これで社会が回って来ているということが、本当の意味で民主主義なんだろうかという問題なんだと思います。どういう取材のあり方が本来あるべきなのかっていう理想論というのは捨てないで、どこから変えていけるかという議論をしなきゃいけないと思うんです。

報道のあり方についてもそうだと思います。ここ十数年、報道のあり方も変わって来ていると思いますが、性暴力については、知見をきちんと広めながら、深い認識をみんなが持てるように変えて行かなきゃならないという問題がある。そういうことを問題提起するために、訴訟にきちんと取り組んでいきたいと思っています。

以上。

弁護士の回答をきいて

報道現場の性暴力とメディアの取材手法についてのテーマで話をしていただける公的な立場の人は少なく、日本メディアで諸事情から記事になりにくい問題ですが、私が自身に起きた性暴力被害を告白してからずっと、求めていた言葉でした。

2人の弁護士からの回答は、取材をしていく人を雇用しているメディアの皆さんが丁寧に考えていっていただきたい視点です。

ちなみに私も長崎の放送局でアナウンサー、記者として働いていたときに、公的機関の取材対象から飲み物に薬物を混入され、重篤な性暴力被害に遭いました。そのことは、2019年11月12月、2020年1月2月のフラワーデモ東京、3月のフラワーデモ長崎でスピーチしました。

追記:

角田弁護士と中野弁護士の言葉について、牧内麻衣さんも書いてくださいました。必読です。

引用

《しかし私は、「 過酷な事件が起きているにもかかわらず、業界組織として具体的な改善措置を取らないでいる 」ということも、「二次加害」のひとつになるのではないかと感じています。》

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