4月から18歳19歳のAV出演契約は「成人扱い」?
政府の答弁書によると、AVの出演契約は、18歳・19歳は未成年取消権はなくなり、「成人扱い」の自己責任となります。
事務所側が俳優側を借金まみれにする、グルーミングして、過剰適応させる、性暴力被害者の性的自傷が搾取されるなどの手口も知られて欲しい。
◉答弁書
参議院議員塩村あやか君提出成年年齢引下げに伴い必要となるアダルトビデオ出演強要問題への対応に関する質問に対する答弁書
民法(明治二十九年法律第八十九号)第五条第二項に規定する取消権は、法律行為一般に関する判断力の未熟な未成年者を保護するため、未成年者が法定代理人の同意なく行った法律行為を原則として取り消すことができるとするものであり、成年年齢の引下げ後、特定の政策目的から、特定の取引類型について、当該取消権を行使することができる者を成年となった十八歳、十九歳の者にまで拡張することは困難であるが、いわゆるアダルトビデオ出演契約を締結したとしても、不当な手段によって締結された契約については、詐欺、強迫等を理由とする取消権を行使することが可能である。
また、内閣府においては、令和四年四月一日からの成年年齢の引下げに伴い、若年層のいわゆるアダルトビデオ出演強要等の被害の予防のため、同月の「若年層の性暴力被害予防月間」に合わせ、ポスター、リーフレット、交通広告等も活用し、集中的な広報を行う考えである。
政府においては、「性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議」を開催し、性犯罪・性暴力に対し、包括的な対策である「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を取りまとめ、令和二年度から令和四年度までの三年間を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」として、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題を含めた性犯罪・性暴力の根絶に向けた取組を進めているところである。
◉何が問題か
(署名呼びかけ文引用)
2022年4月1日から成人年齢が18歳に引下げられますが、それに伴い、18歳、19歳がアダルトビデオ出演契約を結んだ際に「未成年者取消権」が使えなくなってしまいます。
「成人」扱いとなった18歳、19歳にも「未成年者取消権」を拡張することは困難だ、と回答した上で「不当な手段によって締結された契約は、詐欺や強迫等を理由として取消権を行使できる」とのことですが、スカウト業者による勧誘の手口は巧妙で、明確な脅迫がなくても、あれよあれよという間に不当契約を結ばされてる、というのが現状です。
言いくるめられて洗脳される世界です。自分の契約が不当か正当かの判断すらつかない人がほとんどではないでしょうか。
契約の正当性の如何を問わず、いかなる理由であれ取消できたのが「未成年者取消権」であり、これは最後の砦でした。この権利がなくなってしまうことで、若さに付加価値が付くAV業界で18歳、19歳の女性が集中的に狙われることは自明です。
4月以降も20歳のラインを維持するものとして「飲酒」「喫煙」「ギャンブル」があります。これらは、健康上の配慮から20歳で据え置きとなってますが、AV出演も健康上の問題と健全育成に多大な影響を及ぼすのに、なぜ20歳据え置き項目の対象外なのでしょうか。
AVの場合、心身に健康被害を負うし、永続するデジタル性暴力やPTSDでその後の生き方を一生左右される可能性もあります。
こういった被害は、被害者が被害認識を持つまでに時間が掛かるのが特徴です。被害者が被害に気付いて後悔し始めたときにはすでに自分の裸の映像が流通してしまった後だった、その映像を再生される限り反復的にPTSDを発生する、社会生活が送れなくなる、就職が困難になる、希死念慮に襲われる…
妊娠や性感染症、子宮頸癌だけでなく、メンタルが負うダメージがもっと広く共有されてほしいと思います。
林伴子男女共同参画局長は、「AV出演強要被害予防のため・・」と言ってましたが、なぜすでに被害が予見できているにも拘わらず「予防」に終始するのでしょうか。被害発生後の救済措置を講じるのが国の責務ではないのでしょうか。
「内閣府では成人年齢引下げに伴い若年層のAV出演強要などの問題に取り組むためポスターリーフレットを作成し大学などに配布」とのことですが、大学で啓蒙することでどれだけの成果を挙げられるのか疑問です。最近は現役大学生や大卒も増えてきましたが、中卒/高卒といった学歴がなく就業の選択肢がない脆弱な女性が圧倒的に多いのが現状です。高校3年生で成人年齢に達するのに、啓蒙活動の対象エリアが大学だけなのは問題です。
強引な勧誘を伴うエステや整形、ショッピングローン、マルチ商法などで多額の借金を抱えて性産業に吸収されてしまう人もたくさんいます。18歳でどれだけの判断力が養われてるという前提なのでしょうか。
消費者契約法で保護すべき領域をもっと拡大させる必要がありますし、中学、高校の授業で消費者詐欺被害に遭わないような指導の必要があります。
包括的な被害対策教育の実施と、被害発生後の救済措置としての「未成年者取消権」を消滅させないで、若者を守る法整備が必要です。
AV出演経験者と支援職らで、署名募集を始めました。署名を政府に提出し請願する予定です。
未成年取消権を4月以降も18歳19歳歳に存続させる議員立法を超党派の賛同で成立させたい。4月から民法改正により、被害拡大のおそれがある18.19才の AV強要被害を何とか食い止めたいという思いをこの署名に込めています。
AV出演強要問題対策委員は、AV出演経験者と支援職らで構成されています。チェンジオルグ(change .org)でも同様の社名キャンペーンを行っていますが、チェンジオルグ(change .org)は利用したくないという方の声を反映するためにGoogleフォームでも署名とご意見を募ります。いただいたご意見は、政府に伝えます。
◉性的自傷を搾取されることへの危惧
私がAV出演出身者らとともにこの問題に声をあげたのは、性暴力被害者が性的自傷を搾取されている実態があるからです。
AV出演を自主的に選択する女性は、性暴力被害者や発達障害、様々な困難のサバイバーであることが多いと、精神医療、依存症治療の現場では、よく知られています。AV出演する人自身も事務所や制作会社など搾取する側も「性的自傷」「トラウマの再演」などの知識がないまま、出演する女の子は、単にエロい、性交が好きな、性行為を売りにできる価値があると思い込まされています。性的な自傷を自覚することで必要な支援に繋がることができますが、現実は、当事者に正しい情報が伝わりにくい構造があります。
参考資料 白川美也子医師「トラウマのことがわかる本」(2019年 講談社)
医学知識が必要な人に届きますように。
自傷を自覚することで必要な支援に繋がることができます。
性的な自傷について、私も散々苦しんだので、性暴力被害者が危険な行動をしてしまう「性的自傷」や「トラウマ再演」によりについて、もっと社会に知られるべきだと考えています。
私が協力したAERAの記事
私自身の性的自傷について
家庭がつらい、経済的な問題などから、業界に関わっていく人がほとんどで、自主的に主体的に入って行った形をとっていても、「トラウマ再演」や「性的自傷」による過剰適応であることは、まだなかなか知られていません。それを知って搾取するのは、虐待行為です。
性産業従事者には、性被害や虐待を含めた様々な困難からのサバイバーが多く、不適切に与えられた/与えられなかった経験により、自らが傷つく方向に容易に誘導されてしまう人たちがいます。福祉の対応未満の境界知能の人たちが、性産業など搾取の構造に絡め取られることも、日常的に起こっています。
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AV出演者の証言でも、斎藤梓さんの『性暴力被害の実際』にも記載があるように、エントラップ型性暴力と考えられる現場は多いことも、業界に入ろうとしたり、スカウトされた人だけでなく、AV視聴者、中高生から知らなければならない事実があります。
性暴力被害者がトラウマの再現としてAV業界に入って行く人もいるし、経済的な問題や過剰適応により、業界に入り、さらにトラウマを重ねていく人も多い現実は、蓋をされずに、ちゃんと知られるべきです。
性的な同意の問題を置き去りにしてきた国で、性搾取がグルーミングにより、あなたの主体性を応援しますみたいな呪文に置き換わって搾取されています。子どもたちにリスクが丁寧に伝えられる機会もないままではいけません。18歳19歳には救済措置が必要です。AVは一旦リリースされれば、二度と回収できないデジタルタトゥーとして苦痛が永続します。
◉「あなたの主体性を応援します」という搾取
芸能界への憧れ刷り込みが幼児期から溢れている日本社会では、自分の価値観や感性なのかを考えること、日常的に男性の価値観や欲望を内面化していないか、大人が子どもへ刷り込みをしていないか、性的対象となることへの怖さを薄れさせていないか、性的な対象になることにのみ価値を与えていないか、内省が必要です。
「主体性に見せかけた搾取」を煌きとして刷り込む広告や宣伝がメディアで盛んに行われた結果、子どもたちが日常的に男性の価値観や欲望を内面化し、性的対象になることに無防備にさせられています。
私が大学生時代、アナウンス学校に通い始めた時、母がかなり怒っていた理由が、ようやくわかりました。日本の報道番組での女性アナウンサーの立ち位置が、家父長制、男尊女卑の象徴なのに、娘が男性の価値観や欲望を内面化してアナウンサーになりたいなどと言い出したことに憤慨していたのだと。
自分の価値観や感性なのかを考えること
日常的に男性の価値観や欲望を内面化していないか
大人が子どもへ刷り込みをしていないか
性的対象となることへの怖さを薄れさせていないか
性的な対象になることにのみ価値を与えていないか
内省が必要。
今回の署名発起人は、《公道にいくつも穴が開いているのに、公費で修繕せずに、そのまま放置して、「落ちた人が悪い、注意力不足のせい」って言っているような答弁だ。看過できない》と、話しています。
4月からAV出演契約で被害者を出さないために、消費者契約法で保護すべき領域を広げ、中学、高校の授業で消費者詐欺被害に遭わないための指導、包括的な被害対策教育の実施、被害発生後の救済措置として「未成年者取消権」を消滅させないで、若者を守る法整備が必要です。
◉署名提出のお知らせ
AV出演契約は未成年者取消権を無効化しないでください」
18歳~19歳の契約取り消し権について 署名提出・院内集会のお知らせ
主催 AV出演強要問題対策委員会(AV出演者、性風俗出身者と支援職)
2022年3月25日(金)16時(午後4時)から
衆議院第一議員会館第5会議室
【プログラム】
AV出演強要問題対策委員会からのお願い
署名提出
議員からの要請
省庁からの回答
ディスカッション
報道からの質疑応答
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未成年取消権を4月以降も18歳19歳歳に存続させる議員立法を超党派の賛同で成立させたい。4月から民法改正により、被害拡大のおそれがある18.19才の AV強要被害を何とか食い止めたいという思いをこの署名に込めています。
議員以外の一般参加と取材は事前申込をお願いします。
フォームに記入できない場合は、メールでお申し込み下さい。
AV出演強要問題対策委員会 窓口担当 komaken602@gmail.com
フリージャーナリスト
郡司真子 Masako GUNJI
ご意見などは、メールでお送り下さい。
komaken602@gmail.com
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