インターネットライブ配信のこどもたち
資料映像
(郡司からの質問)
成人年齢引き下げによる18歳19歳のAV出演契約取消権を守れという署名が短期間に4万筆超集まり、連日国会でも超党派の議員が若者を守るための議員立法を目指して活発な動きがあります。関連して、こどもが性的搾取されているのは、AVだけではなくて、むしろ、個人動画配信では、もっと酷いことが起きているという声も上がっています。西村医師が執筆された、『行動プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き』第2章でも実例が上がっています。依存症治療の専門医として、多くのこどもたちの臨床から、被害の実情を教えてください。
amazon.co.jp/%E8%A1%8C%E7%8… 行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き 行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き www.amazon.co.jp
西村医師著書
(西村光太郎医師の回答)
◉インターネット使用障害のこどもたち
久里浜医療センターでの臨床でインターネット使用障害の受診は、平均18.2歳です。 小学生、中学生、高校生、大学性などの若い世代です。ギャンブル依存症の中心は 20歳ー30歳代、アルコール依存症は40歳代以上なので、インターネット使用障害の発症が若い世代に偏っているのがおわかりいただけると思います。
インターネット使用障害で受診した男女比は、男:女=9:1です。男子はゲーム依存 女子はSNS依存とそれによるトラブル。デジタル性暴力などと深刻です。
西村幸太郎医師提供資料
◉スマホからSNSトラブルに巻き込まれる
小学生の6歳ー12歳の子どもの8割がインターネットを利用する時代になっていて、中学生は9割スマホを持っています。10代は、基本的にはスマホからのインターネット依存です。子どものインタネット依存は、2019年-2022年にかけてコロナで急激に増えました。
インターネット使用については、個人情報漏洩を心配する人はとても多いのだが、トラブルが起きることへの警戒心が極めて低く、SNSトラブルへの危機感がなく、SNSを介して様々な深刻な問題が起きています。
西村光太郎医師提供資料
西村光太郎医師提供資料
若い世代、こどもたちが夢中になっているSNSといえば、LINE、Twitter、インスタグラム、ティックトックです。
西村光太郎医師提供資料
コロナの問題が起きてから、急速に若い世代のインターネット利用が増えています。その中心がSNS、個人動画配信、ライブ配信で観る方から発信する方に変わって行った様子がわかります。
西村医師提供2018年、2019年インターネット利用
西村医師提供2019年、2020年インターネット利用
◉ライブ配信が主戦場
ライブ配信の世界では、ごく普通の中学生高校生がセクシーな動画の提供により、月に数十万円を稼ぐケースが問題になっています。個人生動画配信の世界は、参加する人の年齢制限がないんです。生動画配信、ライブ配信発信者は、10代から20代に集中しています。24.5%が10代20代です。幼児、小学生、中学生、高校生の性的画像が生配信されています。
西村医師提供資料
西村医師提供ライブ配信について
いわゆる性的画像、動画が配信されているプラットフォームは水色で示していますが、エロコンテンツでプラットフォームが巨額の収入を得ているのがわかります。
西村医師提供資料
西村医師提供資料 水色がエロコンテンツ配信
中高生がライブで性的な動画を配信したり、成人男性と交際しているのが保護者にバレて受診に至るケースや50歳代男性が中学生女子の生配信に入れ込み、数百万をライブ配信に使ってしまい、受診に至ったケースも。中高年男性が中高生とコロナでオンラインセックス依存、夕方6時から没頭して一晩中やめられないという受診例もあります。
ここには、こどもが自主的にひとりで行うものもありますが、配信側の業者やプラットフォームに関わる人がこどもをSNSでスカウトして生配信させている問題があります。
アルコールは、以前、規制が大変甘くて、未成年飲酒、依存症の問題が起き、年齢制限で販売者規制がされ、かなりの効果が出ています。同様に、生動画配信、ライブ配信もプラットフォームにアクセスできる年齢規制が必要ではないかと考えています。
適正AVよりも、市場規模が大きく、幼児から、高校生までのこどもたちが搾取されています。搾取されているのは圧倒的に女の子で、学校がつらい子、家庭がつらい子、寂しくて、悲しい子たちなんです。ネットの世界で男性に性的に求められることに自己肯定感を見いだして性売買につながっていく深刻な現実があります。どうにか助けられないものかと考えています。
◉インタビューを終えて
アダルトビデオ業界に取材した際に、最近の10代の子たちはスマホでセクシー動画を提供することでファンクラブ作ったりして、AV女優より稼いでる。AV人権倫理機構管理下の適正AVの業界より、同人AVや個人配信の方がこどもへの性搾取は酷いという関係者の指摘があり、今回の取材を行いました。依存症治療の臨床から問題提起していただくことで、AV出演取消権だけでなく、性的画像の個人配信からこどもたちをどのように守っていくかが課題であり、関係省庁に働きかけをしていかなければならないと感じました。また一方で、ライブ配信が自身のステージとなり、生きる希望になっているこどもたちの気持ちを否定しないことも治療の上で大切です。なぜ、ライブ配信にしか希望を見出せなくなってしまったのかも含めて、考えていかなければいけません。
様々な傷つき、逆境体験があり、性的自傷、トラウマ再演、性化行動を起こすこどもや若者については、トラウマ治療専門の白川美也子医師にインタビューしましたので、今回のインタビューと合わせて読んでいただくと、なぜ、こどもたちが行動を起こすのか理解いただけると思います。
次回は、依存症治療専門医療機関の斉藤章佳さん、現役トップAV男優の森林原人さんのインタビューをお伝えします。
フリージャーナリスト
郡司真子
ご意見はメールでお願いします。
komaken602@gmail.com
すでに登録済みの方は こちら