色管理 歌舞伎町に吸い取られる
◉グルーミングされる18歳19歳
中学、高校時代いじめでほとんど登校できなかった美佳さん19歳は、得意分野を活かして受験できるAO入試で、都内の有名私立大学に合格。大学からは、学校に行けるかもしれないと期待しましたが、どうしても周囲に馴染めずに、再び自室にひきこもるようになりました。心配して、どうにか登校させようとする両親と対立、とうとう家を出る決心をしました。家を出る決め手になったのは、Twitterで知り合った同じような境遇の男女が暮らす歌舞伎町近くのシェアハウスに空きが出たからです。シェアハウスの暮らしは、不自由はありますが、自宅で両親とぶつかるよりは、マシだったそうです。大学もなじめないので、しばらく休学して仕事で稼ぎ、資金を貯めて、海外に留学したいという夢を持てるようになってきました。しかし、アルバイトの時給では、なかなか目標の金額に到達できません。そこで、シェアハウスの友人たちから持ちかけられたのが、地方に出張する性売買のサービスでした。今のアルバイトでは、毎月貯金できるのは、月に2、3万円ですが、地方への出張性売買では、月に100万くらいは、軽く稼げるようになる、みんなやってるよと、友人らは言います。今は、安全な店があるから大丈夫とどんどん話が進められるのが怖くなったそうです。シェアハウスの人たちと気まずくなり、保護を求めて、シェルターに移りました。
資料映像
美佳さんのようにSNSの人間関係から容易に性売買やアダルトビデオ(AV)、ライブチャットなどの性的画像記録配信のビジネスに取り込まれていく18歳19歳が増えていると、依存症治療専門の西村光太郎医師は指摘しています。
性売買で稼ぐ若い女性のギャラを吸収し、性売買から抜けられなくなる構造があり、それがコロナ禍で拡大していると、歌舞伎町で生まれ育ち、歌舞伎町で約60軒の店子が入る貸しビル業、不動産業を長年営む櫻井哲人さんは、歌舞伎町で起きている現象について指摘しています。
(櫻井哲人さんインタビュー)
スカウトが狙っているのは、地方から出てきたばかりの18歳19歳の女子大生です。実家があんまり裕福ではない子が特に狙われる。コロナ自粛で学校も休み、バイトもない、知り合いも、喋る相手もいないってとこに、SNSで質問形式で話しかけていくんです。
地方から出てきたばっかりの子って、普通に話す相手がいないから、すぐにころっと関係性の依存に陥りやすいんです。また最近は、親が貧困な家庭の小、中、高校生も、首都圏に自宅がある子たちも、孤独ですぐに話に乗りやすい傾向があります。
みんなお金がないからね、バイトって言っても、20歳以下はお酒飲めないから、キャバクラ無理でしょ。だから、稼げるところは、風俗しかない。都内は、コロナで規制が厳しかったからね、地方に飛ばすんですよ。北陸、北海道、福岡、静岡、東北とかね。若い子はね、月に100万円から200万円は稼いでくる。そこで「大変だったね、お疲れさま。」と、歌舞伎町で待ち構えてるのが、ホストなんです。女の子たちはね、キッツイ仕事してきて、ちゃんと話を聞いてくれるホストのためにまた頑張って稼いでくる。コロナ以降ね、全国のホストが歌舞伎町に集まってきてね、今はバブル状態ですよ。コロナ前の3倍の売り上げがあります。同時に、アフターで利用される深酒バーの売り上げが伸びてます。
歌舞伎町の花街通りよりこっち側はね、うちのビルがあるあたり、疑似恋愛依存地帯なんですよ。関係性の依存ですね。今は、中高年男性が利用するキャバクラとかランパブとかそういうのは、ぜんぜんだめで、性売買で稼いできた女の子がホストや男性リフレでお金落とすようになってる。大変な世の中になったと思うけど、これは、政府や行政の大人たちがこれまで、若い子のためにちゃんと教育とか政治をしてこなかった責任だよね。関係依存に搾取されてしまっている女の子たちを責められないよ僕は。
歌舞伎町の説明をする櫻井哲人さん
◉関係性依存、疑似恋愛依存の搾取
ホストによる性売買やAV業界に従事する女性を支配するやり方は、色管理または恋管理と呼ばれています。関係性依存、疑似恋愛依存を利用した搾取です。ホストとAVプロダクション、性風俗業者が一緒になって、女性をスカウトし、搾取するケースもあります。
依存症治療専門の西村光太郎医師によると、擬似恋愛ビジネスに搾取されるのは人間関係の依存のある人が多く、パーソナリティの問題を抱えていて、自己治療仮説が当てはまると考えられます。他の依存症との合併も少なからずみられます。アルコール依存症があり、飲食店の店員に対してストーカー化するケースもあります。ホストクラブに数百万の売掛金ができてしまうケースも少なくありません。疑似恋愛ビジネスは本当に危険と、警鐘をを鳴らします。
関係性依存、疑似恋愛依存で苦しむ若年層は、学校がつらい子どもたちや、学費高騰で学費のために過酷なアルバイトに従事する人たち、貧困家庭で、福祉に繋がりにくい人たちであることが臨床的に明らかになっています。
歌舞伎町
◉新法は希望か
困難女性支援法、AV被害者支援法が今国会で成立予定です。そこで今、国会で様々な審議が行われる中、本当に当事者の声が届くかが焦点です。性売買、AV出演者の当事者、支援者の声として、新法にお願いしたいのは、以下の通りです。
契約書を読み取りが難しい人たちの同意が曖昧に行われてしまう可能性がある。 そもそも認知に困難がある人、それに無自覚な人が集まりやすい。 性暴力被害者や逆境サバイバー、発達障害、境界知能、軽度知的障害のある人などがグルーミングされているケースは、同意といえない。 それらは、スクリーニングして、医療や支援に繋がる必要がある。
経済的貧困理由の場合は、まず、自治体などの支援に繋がる必要があること。 AV業務は、性依存、トラウマ再演、複雑性PTSDを発症する可能性が高く、飲酒喫煙ギャンブルと同等に健康上の観点から、18歳19歳は、業務に就かせてはいけない。
個人配信による性的画像流布に関してもアルコール販売規制と同様に、インターネット使用依存、関係性依存を発症しやすいことから、プラットフォーム規制が必要。 これらのことから、上記の業務により発症したトラウマ治療は、保険適応および、公的支援が必要。
AV契約時に、実際どのような内容を撮影で行うか、業務内容の詳細を知らせることが必要です。挿入、口腔内挿入や粘膜接触についても具体的内容や性感染症の危険性、避妊具、ローションによるアレルギー発症、本番行為による性依存とトラウマ、PTSD発症の危険性とその後の医療についての説明も必須。AV業務の具体的内容を知らずに契約してしまう人が多いです。にっかつロマンポルノ時代は、擬似だったのに、今の AVは、リアルに挿入や口腔挿入、粘膜接触が現場で強要されます。本番行為の禁止、犯罪フィクションの禁止を求めます。
当事者団体「AV出演強要対策委員会」の署名提出について
トラウマの再演について
取材 郡司真子
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